説明
魔術、神秘主義思想の専門家、中村心護氏による、伝統的な魔術書の翻訳書です。
本書『ソロモン王の大きな鍵』は、近代魔術の源流のひとつとして名高いグリモワール(魔術書)のひとつであり、古代イスラエルの賢王として知られるソロモン王の名を冠した魔術的伝承の精華とも言える作品です。
本書のもととなったのは、大英博物館に所蔵されていたソロモンに帰せられる7冊の断章であり、これらを19世紀末、黄金の夜明け団の創設者の一人であるサミュエル・リデル・マグレガー・メイザースが収集・比較・再構成して英訳を試みたことに始まります。こうして近代オカルティズムの文脈の中で命を与えられた『ソロモンの大いなる鍵(The Key of Solomon the King)』は、現在に至るまで数多くの魔術師たちの実践に影響を与え続けてきました。
本書の特徴の一つは、全編がソロモン王による息子レハブアムへの語りかけという形式で記されている点にあります。これは単なる儀式の手引きにとどまらず、魔術に対する哲学的・神秘的な洞察を伴った父から子への教えという形で構成されており、その内的な構造は秘伝の伝授そのものを象徴しているとも言えるでしょう。
その内容は多岐にわたり、魔法の剣や杖、護符、ローブといった各種の魔術道具の製作法、儀式の準備に必要な日時や祈祷の規則、さらには七つの惑星に宿る霊たちの力を引き出すための術式など、緻密かつ実践的な知識が豊富に記されています。そのため、この書は単なる神話や寓話ではなく、儀式魔術を実践する者にとっての手引き、あるいは指導書としての性格をも持ち合わせています。
しかしながら、その記述はラテン語や古風な文体によって書かれており、象徴に満ちた内容もまた極めて難解です。魔術的伝承という性質上、一般の読者には馴染みづらく、また誤読や曲解の危険も孕んでいます。ゆえに、この貴重な叡智が時代の流れの中に埋もれ、忘却されてしまうことを私は深く憂慮しています。
本書の翻訳は、そのような懸念を乗り越え、かつての賢者たちが守り伝えてきた秘儀を、現代の読者にも手の届く形で紹介するための試みです。訳文にあたっては、できる限り原意を損なわぬよう慎重に語句を選びつつ、日本語としての自然な理解を重視しました。
かつてソロモン王が息子に授けた叡智が、今、時を超えてあなたの手の中にあります。この書を通じて、内なる探求の旅が豊かなるものとならんことを、心より願っております。
■商品仕様
内容:全316ページ
サイズ:A5版(H211×W147×D12[mm])
著者:中村心護
発送開始:2025年7月17日(木)
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